退去時の掃除はどこまでやるべき？引越し前のクリーニング事情

退去前の掃除をしっかりやらないと、修繕費用を追加請求される可能性があります。

賃貸物件を借りる際に敷金を支払うのは、引越し後のハウスクリーニング代を前払いしているからです。

そのため修繕費用が事前に集めた敷金の金額を超える場合、差額を追加費用の請求されることも。

今回は、賃貸物件を退去する際の掃除を、どのくらいまで掃除すればいいのかについて、解説していきます。

原状回復とは

そもそも引越しにより、退去する物件の掃除をなぜしなければいけないのでしょうか。

その答えは、退去する際の掃除は借り主の「義務」であり、絶対にしなければいけない作業だからになります。

掃除をする理由は借主に「原状回復義務」があるから

賃貸物件を借りた人には、退去する際『原状回復』の義務というものがあります。

原状回復とは、賃貸物件を借りた当時の状態に戻すこと。

つまり「家を出ていくなら、部屋は借りたときと同じくらいきれいにして返すべき」という義務がその部屋に住んでいた人にはあるのです。

なので部屋をきちんと掃除せずに出ていってしまった場合、その義務を怠っているということで余計なお金（汚した部分の総時代やゴミの処分代等）が請求される可能性があるわけです。

経年劣化による消耗は原状回復義務から除外される

ただどんなに丁寧に使用しても、人が住んでいれば壁やフローリングは傷がつきますし、太陽が当たる場所は日焼けします。したがって、居住前の状態にそっくりそのまま戻すのは現実的に困難です。

そのため国土交通省では、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表し、原状回復をどのくらいやるべきか、限度を示しています。

●ガイドラインのポイント

(1)原状回復とは

原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。

出典：「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について（国土交通省）

少々長くわかりにくいですが、つまるところ

「あまりにも汚れや壊れ方がひどかったりする場合は別だけど、普通の生活で汚れたり壊れたりする部分に関しては大家さんがお金を負担するべき」

ということをこのガイドラインでは言っています。

普通の生活のラインはどこか

どこまでを「普通の生活」とするかの定義は難しいですが、筆者の経験上、

• カレンダーを貼るために壁に画鋲を刺した
• 家具の移動などで床が多少傷ついた

程度であれば普通の生活の範囲で傷ついたと判断されていたように感じます。

ただ、

• 壁に明らかにわかるサイズの穴を開けてしまった
• 掃除を何年もしなくて床にカビを発生させてしまった

など、あまりにも損傷が酷い場合や手入れをしていれば確実に発生を防げる消耗や破損については借りた人が原状回復義務を負い、修繕に必要な費用が請求されますので、気をつけましょう。

なお原状回復については、契約書に記載されていますので、退去する前にもう一度契約内容を確認しましょう。

引越し時の掃除（原状回復）はどの程度までやればいいのか

原状回復でやるべき範囲

大前提:ゴミは全て撤去

原状回復に関してはどの程度までやればよいのでしょうか？

大前提になりますが、部屋を出ていくときはまずゴミを全部捨て、家具や雑貨などは全て撤去して部屋を大家に引き渡しましょう。

こちらは本当に”全て”であり、部屋・台所・風呂場・トイレ含め、自分の物は一切残してはいけません。

小物であれば見逃してくれることもありますが、基本的にはゴミを残していくと撤去代としてお金を余計に請求されることにもなりかねないので、必ず私物は処分・移転して引き渡しを行いましょう。

ゴミや私物をなくすことが、原状回復の第一歩になります。

借り主が負担することになる汚れは掃除、キズは修復

また、原状回復では、

• 借主側が修繕費用を負担することになる汚れで掃除できる部分
• 借主側が修繕費用を負担することになるキズで直せる部分

に関しては徹底的に掃除・修繕するものと考えてください。

それを理解するためにも、どの程度の汚れている・壊れている状態だと借り主側の負担になるのかを下記の表に記載しておきました。

この範囲の掃除・修復に関しては自分で行える範囲でしっかりと対応しましょう。

ただ、難しい清掃・修繕は原状回復の対象外

簡易なキズや、汚れ落としや自分で行えますが、自力で掃除するのが難しいものもあります。

タバコのヤニは、壁のクロスの全面取り替えが必要になりますし、ガラスも破損を直すことはできません。

また壁の腐食や大きな穴も修繕工事が必要となりますので、このレベルの汚れや破損であれば業者に依頼するか、大家と話し合い相応の費用を負担することも必要になります。

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原状回復に伴う費用の支払い方法と修繕費について

基本的には敷金が修繕費（掃除代）に使われる

入居前に敷金を1～2ヶ月分支払った記憶がある人も多いと思いますが、敷金を集めるのはなぜでしょうか。

それは退去時などの掃除費用等に敷金を充当するためであり、敷金は退去後、大家がハウスクリーニングやリフォームする際の修繕費用として使用されます。

敷金が余れば貸主から還付される

敷金は修繕費のために事前に集めたお金です。

そのため修繕費が敷金以内で収まれば、差額金額は返金されます。

修繕費の金額については、退去後ハウスクリーニングが終わった段階で、貸主から連絡があります。

筆者の経験上、一人暮らしの家の修繕費は3～4万円程度であることが多く、もし敷金をその金額以上納付している場合は差額が返還されます。

敷金がまったく戻らないときは、ハウスクリーニング代の領収書など証拠となるものを提示してもらい、修繕費として使わなかったお金は返してもらいましょう。

ちなみに借り主、貸主が修繕費を負担する部分は下記の通りです。

敷金の金額で修繕費が足りなければ追加請求される可能性も

敷金は家賃1か月分が一般的な相場であり、クリーニングだけならその金額で補えます。

ただ大きなキズや破損、カビなどが合った場合には、大がかりな修繕が必要となりますので、敷金の金額では間に合いません。

なので敷金で足りなかった分の費用については、追加で貸主から請求される可能性もあります。

一方で、高額な修繕費を請求された場合、その金額が適切であるか確認する必要があります。

修繕費の根拠を提示してもらい、納得できない金額であれば消費者センターなどに相談するのも選択肢です。

なお敷金の取り扱いについては、契約書に記載があるかどうかも含めて、しっかりと確認してください。

引越し前の掃除のまとめ

引越しで、賃貸物件から退去する際の掃除についてのまとめです。

退去時の修繕費については、賃貸物件で問題になりやすいポイントの一つです。

不動産賃貸業者が仲介している場合には、比較的トラブルが少ないですが、対応が悪い不動産業者もありますので、十分に注意してください。

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