引越しの際、住民票を異動させなければいけないのはご存じかと思います。
でも、バレなければ転入日をずらしてもいいと思っていませんか?
実際、SNSやインターネット上では、ちょっとした裏ワザ技が紹介されていたりします。
しかし行政手続きにウソをつくことは許されませんし、最悪の場合、罰則の対象となりますので嘘をつくのは勧められません。
転入届の提出日は法律で期限が決まっている
転入届を提出するタイミングは、引越し当日から14日以内と法律で定められています。
したがって、引越しをしていないのに転入届を提出することはできません。
住民基本台帳法
(転入届)
第二十二条 転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。以下この条及び第三十条の四十六において同じ。)をした者は、転入をした日から十四日以内に、次に掲げる事項(いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者にあつては、第一号から第五号まで及び第七号に掲げる事項)を市町村長に届け出なければならない。
一 氏名
二 住所
三 転入をした年月日
四 従前の住所
五 世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
六 転入前の住民票コード(転入をした者につき直近に住民票の記載をした市町村長が、当該住民票に直近に記載した住民票コードをいう。)
七 国外から転入をした者その他政令で定める者については、前各号に掲げる事項のほか政令で定める事項
2 前項の規定による届出をする者(同項第七号の者を除く。)は、住所の異動に関する文書で政令で定めるものを添えて、同項の届出をしなければならない。出典:住民基本台帳法
転入届を引越し前には提出できない
転出入の日付は、子ども手当てなどが支給される時期を確認する際に関係します。
地方自治体独自の施策の場合、対象の日以前(以後)の居住者でないと受けられない制度もあります。
ただ引越し前に転入届を提出することはできませんので、手当て受けたい場合には住民票上の住所ではなく、実際に居住する時期をズラしてください。
もちろん転入日自体をごまかしてはいけませんし、現実的に転入する日付をごまかそうと考えたとしても実行することは難しいです。(もちろんウソをついてはいけません。)
転入届は転出証明書がないと手続き不可
し転入届の手続きをするためには、前住所の市区町村で転出届の処理を行い、その際に「転出証明書」を取得する必要があります。
転出日と転入日が違うと、空白の日にちが生まれますよね。
転入届を提出するのは引越し当日から14日以内ですが、転出届の手続きでは転出する日を記載しますので、転入日だけを別日にするのはできないです。
また転出証明書で日付を確認するため、転出と転入の日にちが一致しないことはありえませんし、ウソの日付を記載することもできません。
転出届の手続きは引越し日の前後14日以内に
転出届は、引越しする日の前後14日以内に手続きすることになりますが、引越し前であっても手続き可能なのがポイント。
先に転出処理を済ませれば、引越し後に前住所に戻る必要がなくなりますので、引越し後の作業に専念できます。
そのため転出処理は、引越し前に行いましょう。
同じ市区町村内の引越しは『転居届」を提出すること
引越し先が同じ市区町村内の場合、転出届ではなく、転居届が必要です。
転居届は転出届と同様、引越し当日から14日以内に手続きしなければなりません。
なお同じ市区町村であれば、二か所の役所で作業する必要はなく、一箇所での申請ですみます。
なので「転出証明書」も不要です。
引越し作業が忙しくて、転出入の届け出が遅くなってしまうこともあるかもしれません。
ただそれでも、転出日や転入日を改ざんすることは許されません。
【嘘は厳禁!】引っ越し前に住所変更すると罰則規定の対象に
住民票の異動に関して、嘘の申請を行った場合には、5万円以下の過料(罰金)が科されます。
虚偽とは、転出入の日にち自体をごまかすこと。
たとえば市区町村が独自で行っている給付金をもらうために、転出日を遅くしたり、税金を逃れるために、住所を装ったりすることが挙げられます。
また正当な理由なく、転出入の届け出を提出しなかった際も、5万円以下の罰金の対象となりますので、ご注意ください。
- 転入届⇒住民基本台帳法第22条
- 転居届⇒住民基本台帳法第23条
- 転出届⇒住民基本台帳法第24条
住民基本台帳法
第五十二条 第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。
2 正当な理由がなくて第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。
ウソをつくと本来取得できる手当が受けられない可能性
役所は住民票により、多くの情報を管理しています。
給付金や市区町村の手当を受給できる権利があっても、住民票を移していないと、登録上は住んでいないことになります。
となると、本来もらえるはずの、手当が受けられない可能性もありますので、住民票は必ず異動させましょう。
役所が本気になれば居住実態の調査も可能
不正受給や、税金の未払いなどは、市区町村の財政を脅かす行為ですので、役所も黙っていません。
行政機関には、強力な権限が付与されており、必要であれば住民の個人情報を調べることも容易です。
また他の法令の規定で刑を科すべき場合は、5万円以下の罰金規定の適用はされません。
たとえば不正受給をするため、ウソの申請を行った際には、詐欺罪にとして逮捕される危険性があります。
転出入手続きにおいての判決ではありませんが、不正受給を行った人が詐欺罪として刑事告訴を受けた事例も存在します。
不正受給は犯罪 詐欺罪で刑事告訴し判決決定
平成26(2014)年に生活保護受給者による不正受給が判明し、その内容が悪質であったため、門真警察署に告訴し、逮捕されていた事件について、判決が確定しましたのでお知らせします。
本件は、生活保護受給前より自立して生活するに足る収入がありながら、それらを秘匿し、生活保護が必要であるかのように装うことにより、生活保護費を不正に受給していました。
このような、不正受給は単なる違法行為にとどまらず、生活保護行政に対する市民の信頼を揺るがせる行為であり許し難いものです。門真市として、今後も警察との連携を深め、生活保護行政の適正な運営に向けて取り組んでまいります。出典:門真市
つまりお金を奪う目的でウソをつくと、罰金では済みませんので、やめましょう。
転入手続きが遅れても素直に申告すべき理由
転入届の日付をごまかす人に多いパターンの一つとして、
「転出届を出していなかったので転入届も出すことができず、嘘の日付で転入する」
というものがあります。
もう住んでから数ヶ月経っているというのに、転出した日を書類を提出する日にして、同時にその日を転入日とするわけです。
しかし上で解説したように、役所に出す書類をごまかすというのは自分にとってもメリットが少ないですし、そして何よりデメリットが非常に大きいです。
これは筆者の経験になりますが、転出届転入届の概念を知らなかった学生時代に、遅れたことを謝罪しながら窓口で手続きしたところ、優しく注意を受けただけで、特段の罰則もなく手続きを行ってもらえました。
100%罰則がないとは決して言いませんが、特別な事情があったり悪質でなかったりすれば、役所の方も事情を汲んでくれることはあるようです。
当然悪質であれば罰金が課される可能性はありますが、もしそうでなく転出届を出すのが遅れてしまったりした場合は、事情を説明し、素直に申告することを当サイトでは強くオススメいたします。
転入届と一緒に行う役所手続き
引越ししした際に役所で行う手続きは、住民票の異動手続きだけではありません。
そのため転入届を提出するために役所へ行く際は、他の書類も持参して一緒に手続きを終わらせましょう。
他の市区町村から転入する際に用意すべき書類
他の市区町村から転入する際、用意すべき書類は次の通りです。
- 本人確認書類
(免許証、パスポート、マイナンバーカード等) - 転出証明書
(前に住んでいた市区町村から交付されたもの) - 印鑑
(認印可。ゴム印は不可。) - 国民年金手帳
(加入者のみ) - 在学証明書
(小・中学校の子どもが対象) - 母子健康手帳
(該当者のみ) - 受給資格証明書
(要介護認定を受けている方) - 在留カード
(外国人の方)
代理人が転入手続きを行う場合
異動する本人に代わって代理人が転入手続きを行う際は、基本的に委任状が必要になります。
家族であっても別世帯に住んでいる人は委任状が必要となりますので、ご注意ください。
世帯主や、同一世帯の人については委任状が無くても転入手続きが可能です。
なお市区町村によって、委任状の有無の判断基準が異なる場合もあります。
そのため代理人の方が手続きする場合、一度対象の市区町村に連絡し、委任状が必要になるかを確認してください。
転入届の委任状の書き方
転入届の手続きを代理人に頼む場合、委任状が必要になることもあります。
委任状を作成知る際に重要なのは、必要事項をしっかり記載することです。
委任状に記載されている内容に間違いや不備があれば、代理で手続きできなくなる可能性もあるため注意しましょう。
委任状は委任する本人が作成すること
委任状は、なりすまし等を防止する観点から、委任する本人が書類を作成してください。
代理人になる人の年齢制限などはありませんが、代理人が行った行為の損害などは委任した人が被ることになるため、信頼できる人に委任してください。
なお本人が委任状を作成できないケースにおいては、代筆により委任状を作成することも可能です。
代筆者は最初に本人が手続きを委任する意思があるかを確認し、作成後に代筆者の氏名および代筆した理由を記載してください。
代筆した場合でも、原則本人の署名は必要になります。
ただ本人が署名できない状況であれば、拇印を署名の代わりとみなする自治体もありますので、転入手続きを行う市区町村にご確認ください。
転入届で使用する委任状の様式
役所で使用する委任状に規定された様式はありません。
そのため必要事項が記載されていれば、委任状の効力は発揮されます。
全国の各市町村ホームページでは、住民票異動手続きで使用する委任状の様式が掲載されています。
市区町村名が印字されていなければ、どこの市区町村のフォームを使用しても問題ありません。
また委任状を作成する際は、次の事項を記載してください。
- タイトル『委任状』
- 作成年月日
(委任状を作成した年月日を記載) - 委任する本人の住所、氏名、生年月日、電話番号、押印
- 代理人の住所、氏名、生年月日
- 委任する内容についての記載
(「私は次の者を代理人と定め、○○の権限を委任します。」など)
参考:千葉県千葉市の委任状フォーム
委任状の住所・氏名は自筆で書くこと
委任状の様式はパソコンで作成しても、手書きでも大丈夫です。
ただ住所・氏名などについては手書きを求める自治体もありますので、本人の住所・氏名は、委任者が必ず自筆で署名し、押印してください。
委任状で使用する印鑑は認印
委任状で押印する印鑑は実印ではなく、認印を使用して大丈夫です。
認印は文房具店などで販売されているハンコをいい、朱肉を使用して押印する物です。
一方シャチハタなど、ゴム印式のハンコについては印影が崩れるなどの理由から、役所の書類で使用するのは避けてください。
転入届の代理人が持参する書類
転入届の手続きを代理で行う人は、委任状以外にも持参すべき書類がありますので、忘れないように注意しましょう。
代理人が手続きする際に持参すべき書類
- 委任状(引越しする本人が自筆で署名・押印したものに限る)
- 窓口に来る代理人の本人確認書類
- 印鑑(引越す本人の認印)
- 印鑑(代理人の認印)
- 国民健康保険証および年金手帳
(加入者のみ)
本人確認書類は、運転免許やマイナンバーカード(写真付き)など、公的機関が発行した写真付きの書類であれば1点準備してください。
写真付きの書類がない場合は、国民健康保険証、国民年金手帳など本院確認書類を2種類用意する必要があります。
主な本人確認書類一覧(1点のみで本人確認可能)
- 運転免許証
- 旅券(パスポート)
- マイナンバーカード(個人番号カード)
- 住民基本台帳カード(写真付き)
- 身体障害者手帳
- ※法律またはこれに基づく命令の規定により交付された写真のある書類
主な本人確認書類一覧(2点で本人確認書類とみなす)
- 国民健康保険被保険者証
- 健康保険の被保険者証
- 介護保険被保険者証
- 共済組合員証
- 国民年金手帳
- 住民基本台帳カード(写真無し)
- 生活保護受給者証
引越し前に転入届を提出した場合のまとめ
引越し前に転入届を提出したら、どうなるか?という疑問についてのまとめです。
- 転入届は引越し前に提出できない
- ウソの転入日を記載すると罰金の対象
- 不正受給などの目的の場合は逮捕される可能性も
正当な理由があって、住民場を異動できなかった場合には、罰則を受けることはありません。そして手続きが遅れていたとしても、悪質でなければ多少注意を受ける程度で済むことがあったりします。
ただ住民票を移さないと、他の手続きを行えませんので、引越し荷物の運搬が終わりましたらすみやかに住民票の手続きを行いましょう。