納税は国民の義務なので、支払い漏れがあると罰金として余分に税金を納めることになります。
会社員や公務員の場合、税金関係は職場が行ってくれますが、自営業や年金暮らしの方は自分で税金手続きしなければいけません。
また会社員の方でも確定申告が必要なケースもありますので、本記事で手続きを必要とする税金の種類や、支払先をご確認ください。
所得税(国税)の引越しした際の手続き
所得税を申告する場所は税務署です。
税務署は全国に524か所ありますが、確定申告書を提出できる税務署は決まっています。
確定申告書を提出できるのは管轄税務署のみ
確定申告書を提出先の税務署は、納税地となる管轄税務署のみです。
(納税地を別途指定していなければ、住所地が納税地となります。)
税務署の管轄区域は署によって異なり、1つの税務署で複数の市区町村のエリアを管轄している場合もあります。
一方で、1つの市区を複数の税務署で分割して管轄している税務署もありますので、市区町村の地域名まで含めて管轄の税務署を確認してください。
税務署は申告時点の納税地を管轄する場所
確定申告書を提出する税務署の判定時期は、申告書を提出する時点です。
たとえば令和2年分の所得税の申告書を提出する場合、令和2年中はA税務署に住んでいたとしても、申告書を提出時にB税務署管内の住所地に引越した際は、B税務署が提出先となります。
また訂正申告や修正申告など申告書を再提出する場合も、提出先は当初申告をした税務署ではなく、提出時点で住んでいる場所を管轄する税務署に申告することになります。
- 訂正申告書
申告期限内に申告書を再提出する申告書。
期限内に複数の申告書が提出された場合、後に提出された申告書が有効な申告書となります。 - 修正申告書
申告期限後に申告書を再提出する申告書。
当初申告よりも納税額が増加する場合に提出する申告書をいいます。
当初申告よりも納税額が減少する際に提出する書類は、更正の請求書です。
管轄税務署が変わる場合は振替納税を再度申請すること
振替納税は納税申告をした際の税金の支払いを、銀行引き落としにする制度です。
振替納税制度を利用する場合は事前申請が必要であり、申請すれば毎年銀行口座から所得税が引き落としになります。
(振替納税する税目は選択制です。)
ただ注意点として、引越しなどにより管轄税務署が変更した際は、振替納税の申請を再度行う必要があります。
振替納税の再申請を行わないと、自動引き落としされません。
所得税を振替納税は、所得税の申告期限(翌年3月15日)までに届出書を提出することが要件です。
申告期限を過ぎた場合、振替納税は翌年からの適用となりますので申告書と一緒に届出書を提出してください。
間違えて別の税務署に申告書を提出してしまった場合の対処法
確定申告書を引越し前の住所を管轄する税務署に提出してしまった場合は、提出した税務署に連絡してください。
税務署に連絡すれば、ほとんどのケースで申告書を本来の税務署へ移送してくれます。
ただ実際の取り扱いについては、提出内容などその時の状況で変わる場合もありますので、提出先を間違えた場合は、放置せずに税務署へ問い合わせしましょう。
税務調査を受けている途中で引っ越しする場合
税務調査は、管轄税務署の調査担当者しか行うことができません。
そのため税務調査の途中で他の税務署の管轄へ引越しする際は、調査担当の税務署が変更します。
調査担当税務署が変更すると、引き継ぎなどで調査が長引きますので、調査を受ける前に引越しの予定がある場合は、事前に伝えておいたいいでしょう。
更正の請求書の対応は引越し後の住所を管轄する税務署が担当する
税務署に更正の請求など申請をしている場合、対応する税務署は現時点で住んでいる場所を管轄する税務署です。
当初申告書を提出した後に引越した場合は、引越し後の住所を管轄する税務署に更正の請求書を提出し、請求書を提出後に引越しした場合は、新たな住所の管轄税務署が担当となります。
還付金の振り込み手続きは、管轄税務署でしか行うことができません。
したがって事前に引越しした旨を税務署へ伝えないと、還付金の戻りが遅くなりますので注意しましょう。
住民税(地方税)の引越しした際の手続き
住民税は、市民税(市区町村)と県民税(都道府県)を合わせた税金であり、住んでいる場所を管轄する自治体へ納める地方税です。
収入がない人でも住民税を納めるケースがありますので、引越しした際は納税先誤りにご注意ください。
納税地は1月1日現在で住んでいた市区町村
住民税を納める市区町村は、1月1日時点で住んでいた市区町村です。
たとえば令和3年度の住民税は、令和2年1月1日から12月31日の所得金額に対して課され、手続きする市区町村は令和3年1月1日時点で判断します。
したがって令和2年10月までA市に住んでいても、令和3年1月1日時点でB市に移り住んでいて場合には、B市に住民税を納めることになります。
住民票を移さないと前居住地の市区町村から住民票の通知が届きますので、住所票の異動は指定されている期限内に手続きを済ませてください。
納税通知書は1月1日現在の市区町村から送付される
納税通知書は通常5月下旬から6月上旬に送付され、6月・8月・10月・1月の計4回に分けて納めることになります。
住民税の申告などは、1月1日時点での市区町村へ行いますが、年の途中で住んでいる市区町村が変更になった場合でも、納付先の市区町村は変わりません。
たとえば7月にC市からD市に引越した場合でも、8月・10月・1月の住民税はC市へ納めることになります。
なお住民税は地方税法により定められており、地域によって住民税の取り扱いは全国共通です。
所得税の確定申告をすれば住民税の申告は不要
所得税は税務署、住民税は市区町村と、税金によって扱っている場所は違いますが、確定申告においては連携しています。
所得税の確定申告書を提出した際は、申告書のデータが市区町村へ送られるため、別途市区町村へ住民税の申告書を提出する必要はありません。
しかしながら、確定申告は不要な場合であっても、住民税の申告が必要となるケース(※)も存在します。
そのようなケースに該当した際は、市区町村で住民税の申告手続きを行ってください。
※サラリーマンをやっていて、副業所得が20万円以下の方など
住民税が二重課税になる心配はない
住民税は1月1日時点で住んでいる市区町村から納付書が送られてきます。
そのため年の途中で引越した場合でも、住民税の通知が複数送られることはありませんし、二重課税になる心配もありません。
万が一複数の市区町村から住民税の通知書が送付されましたら、各市区町村に確認してください。
住民票を移さないまま暮らしている場合の住民税の支払先は?
住民税の支払い先は、原則として住民票がある市区町村です。
しかし市区町村は、住民票を移さないで住んでいる人は把握した場合、居住者とみなして住民税を課すことができます。
そのため住民票上の住所がE市でも、実態がF市の場合には、F市に住民税を納めることになります。
地方税法第294条第3項
(市町村民税の納税義務者等)
市町村は、当該市町村の住民基本台帳に記録されていない個人が当該市町村内に住所を有する者である場合には、その者を当該住民基本台帳に記録されている者とみなして、その者に市町村民税を課することができる。この場合において、市町村長は、その者が他の市町村の住民基本台帳に記録されていることを知つたときは、その旨を当該他の市町村の長に通知しなければならない。
国民健康保険の引越し時にやるべき手続き
国民健康保険を加入している人は、引越しの際に手続きが必要となります。
会社を退職し、会社が加入している健康保険から国民健康保険に切り替える方も、加入手続きが必要です。
国民健康保険手続きは旧・新市区町村で転出後14日以内に
国民健康保険の手続きは、転出後14日以内に行ってください。
国民健康保険は市区町村ごとで管理しています。
そのため他の市区町村に引越す際は、旧住所で資格喪失手続きと、新住所で加入手続きが必要です。
また同じ市区町村内の引越しであっても、住所変更手続きは行ってください。
旧住所の市区町村では資格喪失手続きを行う
国民健康保険の資格喪失手続きは、旧住所の市区町村へ『国民健康保険被保険者資格喪失届』を提出します。
『国民健康保険被保険者資格喪失届』は、窓口または郵送での提出が可能であり、転出届手続きと一緒に行うのが一般的です。
国民健康保険の資格喪失手続きで必要になる書類は、以下の通りです。
資格喪失手続きの必要書類
- 個人番号(マイナンバー)が確認できる書類
- 健康保険証
- 職場の健康保険証
(職場の健康保険に加入する場合) - 保護開始決定通知書
(生活保護を受ける場合)
新住所の市区町村では加入手続き行う
引越し後の市区町村においては、国民健康保険の加入手続きが必要です。
国民健康保険に重複して加入することはできないため、旧住所の市区町村で資格喪失手続きを終えてから作業してください。
国民健康保険の加入手続きで必要になる書類は、以下の通りです。
加入手続きの必要書類
- 個人番号(マイナンバー)
- 身分証
- 印鑑
- 銀行口座の確認できる書類
- 前年の所得が確認できる書類
国民健康保険の交付は世帯主宛に簡易書留郵便で送付され、手元に届くまで数日かかります。
本人が身分証を持参した際は、窓口で保険証が交付されますので、引越し後すぐに保険証が必要になる人は事前に役所に問い合わせ、即日発行できるかご確認してください。
国民年金の引越し時にやるべき手続き
引越しした際、国民年金の住所変更手続きが必要な方と不要な方がいます。
手続き不要に該当する人は、特段の手続きを要しませんが、手続きが必要な方は期限までに住所変更手続きを行ってください。
手続きが不要な人はマイナンバーとの連携が完了している人
日本年金機構はマイナンバー(個人番号)が収録(紐付け)されていない人に対し、平成29年1月以降、個人番号等登録届によりマイナンバーの提出依頼をしています。
マイナンバーと基礎年金番号の紐付けが完了している人については、年金の住所変更手続きは不要です。
マイナンバーの登録住所が変われば連携している年金の住所も自動で変更されるため、別途国民年金の住所手続きを行う必要はありません。
なおマイナンバーの住所変更手続きはやることになるため、そちらは住民票と一緒に手続きを行ってください。
国民年金の住所変更手続きを必要とする人
国民年金の住所変更手続きが必要な人は、マイナンバーを保有していない人や基礎年金番号との紐付けが完了していない人です。
マイナンバーは日本に住んでいる人に与えられる番号であり、付与されるかどうかに国籍は関係ありません。
一方で、日本人でも海外に住んでいる人へマイナンバーは与えられていないので、以下に該当する方は、国民年金の住所変更手続きをしてください。
年金の住所変更が必要になる方
- マイナンバーと基礎年金番号が紐付けできていない人
- マイナンバーを持っていない海外居住者
- マイナンバーを持っていない短期在留外国人
- マイナンバーの番号が変更した人
なお日本に住んでいる人は、マイナンバーと基礎年金番号の紐付けが随時行われていますので、自ら連携作業をしていなくても紐付けが完了しているケースもあります。
マイナンバーと基礎年金番号の連携の有無を確認する方法
マイナンバーと基礎年金番号が連携しているかは、「ねんきんネット」または「年金事務所」で確認できます。
ねんきんネットで確認する方法
「ねんきんネット」とは、日本年金機構が運営しているホームページです。
基礎年金番号を所持している人なら原則利用可能で、登録手続きすることで自身の年金情報を24時間確認できるようになります。
(昭和61年4月以前に年金受給権が発生した、老齢年金受給者の方は利用対象外となります。)
ねんきんネットで確認できる情報
- 年金記録
- 将来得られる年金見込額
- 「ねんきん定期便」の電子版
- 日本年金機構から送付された各種通知の確認
ねんきんネットへの登録には、基礎年金番号とアクセスキーが必要です。
アクセスキーは、ねんきんネットのユーザーIDを取得するために必要な17桁の番号で、ねんきん定期便などに記載されています。
アクセスキーを所持していない人は、ねんきんネットの新規登録ボタンの「アクセスキーなし」から申し込みをしてください。
登録手続きが完了すると、5営業日程度で日本年金機構からハガキで通知され、ログインできるようになります。
年金事務所で確認する方法
年金事務所では、電話または窓口で年金に関する相談を受けられ、個人の方なら全国どこの年金事務所窓口でも相談可能です。
窓口でマイナンバーと基礎年金番号の紐付きを確認する際は、それぞれの番号が確認できる書類を持参してください。
「予約受付専用電話」
0570-05-4890(ナビダイヤル)
03-6631-7521(一般電話)
受付時間
月曜日から金曜日(平日)
8時30分から17時15分
※日本年金機構では窓口相談をする際、事前予約を推奨しています。
なお年金事務所については、日本年金機構のホームページから確認できます。
住所変更手続きは引越し後14日以内に住まいの市区町村で
年金の住所変更手続きの期限は、引越し後14日以内です。
国民年金第1号被保険者に該当する人の住所変更手続きは、市区町村窓口で行います。
第1号被保険者に該当する人は、会社の厚生年金に入っていない方など、20歳以上60歳未満の自営業者・農業者とその家族、学生、無職の人が対象です。
マイナンバーと基礎年金番号が紐付いている場合は、年金の住所変更手続きは不要であり、手続きする際は、住民票の異動手続きと一緒に行うのが一般的です。
住所変更手続きの必要書類
- 年金手帳(基礎年金番号が確認できる書類)
- 印鑑
- 運転免許証など本人確認できる書類
会社員・公務員が引越し時に行う税金手続き
会社員・公務員が引越し時に手続きすべき、所得税・住民税・健康保険・年金について解説します。
所得税の手続きは原則会社が行う
所得税と住民税の住所変更手続きは、基本的に勤め先が手続きしてくれます。
所得税は年末調整で税金の過不足調整が完了していれば、確定申告書を提出する必要はありませんし、税務署へ住所変更の届出も不要です。
自宅を購入し住宅ローン控除を適用する場合や、年の途中で転職した場合、医療控除を受けたい場合は、確定申告が必要です。
住民税の手続きは原則会社が行う
住民税も所得税同様、勤め先が住所変更手続きを行ってくれるため、本人が直接作業する必要はありません。
住民税の申告についても、税務署に確定申告書を提出すれば税務署から市区町村に申告内容のデータが引き継がれるため、確定申告書を提出していれば再度住民税の申告書を提出する必要はありません。
国民健康保険加入者は資格喪失と加入手続きを忘れずに
会社員の方が健康保険に加入している場合は、会社が保険手続きを行ってくれるため本人が手続きする必要はありません。
しかし会社員の方でも国民健康保険に加入している場合があり、その際は引越しによって手続きが必要です。
国民健康保険と健康保険の違いは、保険者の違いです。
国民健康保険は市区町村が保険者となり、健康保険は会社が加入している健康保険団体が保険者です
国民健康保険の保険者は市区町村なので、他の市区町村へ引越した場合には、資格喪失手続きと加入手続きを行うことになります。
また同じ市区町村内の引越しでも、住所変更手続きは必須であり、旧住所のままでは保険証を利用できません。
保険証が使えないと病院の診察代は、3割負担(現役世代)ではなく10割負担となるため注意してください。
厚生年金加入者は所属先が住所変更手続きを行う
常時従業員がいる会社に勤めている70歳未満の方は、基本的に厚生年金に加入します。
厚生年金保険への加入は会社単位ではなく、事業所単位(本社、支店など)であり、手続きは被保険者となる事業主が行います。
そのため本人が年金の住所変更手続きをする必要ありません。
被保険者となる方
臨時に使用される人や季節的業務に使用される人を除いて、就業規則や労働契約などに定められた一般社員の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上ある従業員です。
また、一般社員の所定労働時間および所定労働日数が4分の3未満であっても、下記の5要件を全て満たす方は、被保険者(短時間労働者)になります。
なお、この場合の従業員は、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなどの名称を問わず、事業所に雇用される人すべてを含みます。出典:日本年金機構
自営業が引越し時に行う税金手続き
自営業は、会社員なら会社が行ってくれる所得税・住民税・健康保険・年金手続きも、自ら行う必要があります。
確定申告書の提出先は申告時点の管轄税務署
確定申告書の提出先は、申告書を提出するの納税地を管轄する税務署です。
納税地を指定していない人は、住所地が納税地です。
税務署は納税地以外の確定申告書は、受け取りません。
なお振替納税制度を利用している人は、管轄税務署が変われば再度申請する必要があるため、申告書と一緒に提出してください。
納税地を指定している人は住所変更の届出書を提出すること
個人事業主のうち、住所以外の場所を納税地としてしている人は、納税地の異動届出書の提出が必要です。
異動届を提出先は、異動前の納税地を所轄する税務署であり、異動後の納税地を管轄する税務署ではありませんので注意しましょう。
異動届の提出期限は具体的に定めていないですが、基本的には納税地の異動した時、速やかに提出してください。
住民税は納付書の宛先の市区町村に支払うこと
年末に引越しした場合や確定申告書、源泉徴収票に旧住所が記載されいる場合、住民税の納税通知書が旧住所と新住所の市区町村からそれぞれ送付されることもあります。
住民税はその年の1月1日に居住していた市区町村へ納めることになり、重複して住民税を納めなければいけないケースはありません。
住民税の申告をする際は、市民税・県民税申告書は住んでいる場所の市区町村へ提出します。
所得税の確定申告書を提出していれば、住民税の申告書を別途提出する必要はありません。
しかし住民税の申告書のみが必要になるケースや、別途住民税の申告書を提出した方がいいケースもありますので、その際は個々の状況に応じて申告の必要性を判断してください。
国民年金はマイナンバーの紐付け有無で変わる
マイナンバーと国民年金の基礎年金番号が紐付けされていれば、国民年金の住所変更手続きを行う必要はありません。
ただマイナンバーの住所変更手続き必要であり、手続き期限は引越し後14日以内ですので、同様の期限が定めてある住民票と一緒に手続きしてください。
引越し時の所得税・住民税・保険・年金手続きのまとめ
引越しにおける、所得税・住民税・保険・年金の手続きについてのまとめです。
- 所得税の申告先は申告時点の住所を管轄税務署
- 住民税は1月1日時点の市区町村が管轄
- 国民健康保険は廃止・加入手続きが必要
- 国民年金はマイナンバーとの紐付きを確認
確定申告は自営業であれば毎年行いますが、会社員であっても医療費控除などを適用する場合には申告してください。
会社員の健康保険は会社が住所変更手続きを行ってくれる一方で、国民健康保険加入者であれば市区町村にて手続きが必要です。
国民年金はマイナンバーとの紐付けが完了しているかで、手続きの有無が変わります。
引越し時はやるべき手続きが多いですので、自分がやるべき作業をリスト化して引越し準備を進めましょう!