住民票異動手続きは、引越し先の場所によって手続きが異なります。
役所は基本的に平日しか開いていませんので、平日に休みを取得するのが難しい方は代理人に手続きを依頼することも選択肢です。
本記事では住民票異動手続きを代わりに行える人と、手続きする際に必要となる書類について解説します。
住民票異動に関する手続きを行える人は誰か?
住民票は、異動する本人が手続きするのが原則です。
ただ本人以外でも手続きできますのでご紹介します。
住民票の手続きは本人・世帯主・同世帯者が手続きを行う
住民票手続きは、本人はもちろんのこと、世帯主および同世帯者も手続きすることが可能です。
そのため家族で引越しする際は、親が子どもの住民票の異動手続きを一緒に行って問題ありません。
市区町村の窓口では本人確認を行いますので、手続きする人の身分を証明する書類(運転免許証)は必ず持参してください。
住民票の異動手続きは代理人でも手続き可能
世帯者が本人のみのケースで自身が手続きできない場合でも、委任状を作成すれば手続きを委任することも可能です。
世帯主または同世帯者の場合、基本的に委任状を作成する必要はありませんが、それ以外の人が代わりに手続きする際は委任状を用意しないと住民票異動手続きを行えません。
使用する委任状は、必要事項が記載されていれば自作して大丈夫ですし、各市区町村ホームページに委任状の様式は掲載されていますので、そちらも活用してください。
住民票の委任状と手続きに必要になる書類
代理人に住民票異動手続きを委任する際に必要になる資格や、書類について解説します。
住民票手続きの代理人に資格は不要
住民票異動手続きを代理人は、資格などは必要ないため基本的に誰でも代理手続きが可能です。
世帯主・同世帯人以外の別居家族などに代理手続きをしてもらう場合、委任状が必要となりますので、住民票異動手続きを行う前に委任状を作成してください。
なお委任状を受けた人が行った行為は、本人が手続きを行ったのと同じなので、委任する内容は限定するのが一般的です。
代理人が住民票手続きをする際に必要な書類
代理人が住民票手続きをする場合、通常の手続きで必要になる書類に加え、委任状と代理人の本人確認できるものを用意してください。
本人確認できるものは、運転免許やマイナンバーカード(写真付き)、パスポートなど、公的機関が発行した写真付きのものがあれば、1点のみで本人確認できます。
運転免許証などを所有していない方は、国民健康保険証、国民年金手帳など写真無しの書類を2点用意すれば、本人確認書類として認められます。
〇主な本人確認書類一覧(1点のみで本人確認可能)法律またはこれに基づく命令の規定により交付された写真のある書類
- 運転免許証
- 旅券(パスポート)
- マイナンバーカード(個人番号カード)
- 住民基本台帳カード(写真付き)
- 身体障害者手帳
〇主な本人確認書類一覧(2点で本人確認書類として扱う)
- 国民健康保険被保険者証
- 健康保険の被保険者証
- 介護保険被保険者証
- 共済組合員証
- 国民年金手帳
- 住民基本台帳カード(写真無し)
- 生活保護受給者証
委任状の記載内容と作成する際の注意点
委任状は法律で規定された様式はなく、転出届で使用する委任状も必要事項が記載されていれば問題ありません。
- 見出し(委任状)
- 作成年月日
(委任状を作成した年月日を記載) - 委任する本人の住所、氏名、生年月日、電話番号、押印
- 代理人の住所、氏名、生年月日
- 委任する内容についての記載
(「私は次の者を代理人と定め、○○の権限を委任します。」など)
委任状は委任する本人が作成してください。
本人の住所・氏名は委任者が必ず自筆で署名し、押印(認印で可)する必要があります。
また記載事項に不備があると、委任状としての効力が発揮されず、代理手続きが行えない可能性もありますのでご注意ください。
なお委任状は全国の各市町村のホームページで様式が公開されていますので、そちらを利用すれば一から委任状を作成する必要はありません。
参考:千葉県千葉市の委任状フォーム
委任状を作成する際に記載する住所について
委任状に記載する住所は、委任状を作成する時点の住所を書いてください。
引越し前に委任状を作成した場合は、引越し前に住んでいる場所の住所になりますし、引越し後の手続きをお願いする際は、引越し後の住所を書くことになります。
委任状を作成した後に引越しして住所が変わる場合には、委任状に記載してある住所からの異動履歴が確認できる書類を用意しましょう。
住民票を持参すれば住所履歴を確認できますし、運転免許証でも住所変更手続きを行えば裏面に履歴が記載されます。
市区町村をまたぐ引越しの場合、住民票で異動履歴を確認できないこともありますので、住所変更の履歴は戸籍の附票で確認します。
戸籍の附票は、その本籍地になってからの住所履歴が記載された書類です。
そして本籍地も変わっている方においては、転籍前の戸籍の除附票を取得する必要がありますので前もって準備することをオススメします。
引越しによる住民票異動手続きのポイント
引越しをした場合、転出届・転入届または、転居届の手続きが必要になります。
住民票手続きには期間がありますので、タイミングを間違えずに住所変更してください。
他の市区町村への引越し時は「転出届」と「転入届」の手続きが必要
住民票手続きは、前住所の市区町村で『転出届』の手続き、新住所の市区町村で『転入届』の手続きが必要です。
転出届の手続きを行った際に発行される「転出証明書」は、転入届の際に必要になります。
そのため住民票の手続きは転出届⇒転入届の順番で行ってください。
同じ市区町村内の引越しする際には『転居届』が必要
同じ市区町村内の場合、転出・転入手続きは不要ですが、代わりに転居届を行わなくてはいけません。
市区町村をまたいだ引越しではありませんので、現在住んでいる場所の役所で手続きを行います。
引越しにより『転出届』を提出する際の手続き方法
引越しで住民票を移す場合、引越しする前に転出届手続きすることをオススメします。
転出届手続きのタイミングは引越し前後14日以内
転出届の手続きは、引越し前後14日以内に今まで住んでいた引越し前の市町村の役所で手続きしましょう。
(東京23区の場合は他の転居する際、転出届が必要です。)
引越し後でも転出届手続きすることも可能ですが、引越し先が遠距離になる場合、役所に行くのが大変ですので手続きするタイミングは基本的に引越し前です。
(郵送で手続きする選択肢もあります。)
また市町村によっては、引越し日前30日から手続きを受け付けている場所もありますので、現在住んでいる自治体ホームページで手続き期間は確認してください。
なお転出届手続きを行った際に発行される『転出証明書』は、転入届の手続き時に必要になりますので、引越し荷物に紛れることのないよう大切に保管してください。
転出届と一緒にやるべき手続きと必要書類
転出届以外にも役所でやるべき手続きは、国民健康保険など多いです。
一緒に手続きする際はそれらの書類も持参しないと、何度も役所に行くことになるため、役所で必要になる手続きを確認し準備してください。
- 本人確認書類
※外国人の方は転入者全員の在留カード - 印鑑
- 国民健康保険証(加入者のみ)
- 介護保険証(対象者のみ)
- 後期高齢者医療被保険者証(加入者のみ)
- 通知カード、またはマイナンバーカード
- 住民基本台帳カード(所有者のみ)
転出証明書は郵便で取得することも可能
転出証明書は郵送で取得することも可能です。
転出証明書を郵便で取得できる人は、本人と本人と同一世帯の家族です。
同一世帯とは、同じ住所で生活を一緒にしている世帯をいい、パートナーと同居している場合など、血縁関係ではない人でも同一世帯となるケースもあります。
逆に血縁関係があっても、別住所に住んでいる家族が代理で請求することはできませんのでご注意ください。
(委任状により手続きの委任を受けている場合を除きます。)
転出届を郵送する際は次の書類を同封し、転出手続きを行う市区町村宛に送付してください。
- 郵送用の転出届申請書
- 本人確認書類の写し
(運転免許証やマイナンバーカードなど) - 返信用封筒
(定形郵便の場合は84円切手を貼ること)
※転出届の手数料は無料です。
転出証明書の請求を行い、返送されるまでの期間は市区町村によって異なりますが、一般的には市区町村に書類が到着してから1週間程度かかります。
ただ記載する書類に不備があったり、添付書類に不足があると再度郵送しなければなりませんので注意しましょう。
引越しにより『転入届』を提出する際の手続き方法
引越し先の市区町村で行う、転入届手続きの流れを解説します。
転入届手続きは引越し後14日以内にやること
転入届は引越し後14日以内に手続きしてください。
14日以内とは、法律で規定された期限です。
したがって必ず期間内に手続きを済ませなければなりません。
住民基本台帳法
(転入届)
第二十二条 転入(新たに市町村の区域内に住所を定めることをいい、出生による場合を除く。以下この条及び第三十条の四十六において同じ。)をした者は、転入をした日から十四日以内に、次に掲げる事項(いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者にあつては、第一号から第五号まで及び第七号に掲げる事項)を市町村長に届け出なければならない。
また転入届の手続き時には、『転出証明書』が必要となりますので、前居住地の市区町村で転出届の手続きを行ってください。
転入届手続きをする際の必要書類
転入届手続きをする際は、以下の書類を用意してください。
転入届以外でも転入先の市区町村でやるべき手続きはありますので、一緒に作業すると二度三度役所へ行く必要がなくなります。
- 転入前の市区町村から交付された転出証明書
- 本人確認書類
※外国人の方は転入者全員の在留カード - 印鑑
- 児童手当受給者および子ども医療費の助成対象者のいる世帯については子どもと受給者の健康保険証
※所得証明が必要な場合がありますので、市区町村にお問合わせください - 通知カード
(住民基本台帳カード・マイナンバーカードを所持している人を含む)
転入手続きを行わない場合のデメリット
運転免許証や、インターネット回線など契約しているサービスは、住所が変わった際に変更手続きが必要です。
転入手続きが終わっていないと、運転免許証の書き換えはできませんので、住所変更が行えないケースもあります。
- 免許証の更新ができない
- 住所確認で証明できる書類がない
- 住民票の写しや印鑑証明書を発行できない
- 児童手当などがもらえない可能性
- 税金手続きが面倒になる
また自動車保険は登録している住所と実際の住所が違う場合、保険が下りるまで時間がかかることも十分考えられます。
そして契約内容に虚偽の記載があったとして、最悪の場合保険金を受け取れない可能性もありますので、引越しした際は速やかに住民票の異動手続きを行ってください。
引越しにより『転居届』を提出する際の手続き方法
転居届は、同じ市区町村内で引越した場合に行う手続きです。
転居届手続きは引越し日から14日以内にやること
転居届手続きは、引越し日から14日以内に行ってください。
転居届の場合は、転出届の手続きも必要ありません。
ただ東京23区に住んでいる方が他の区に異動する際は、転居届ではなく転出届・転入届の手続きを行いますので間違えないように注意しましょう。
転居届手続きでの必要書類
転居届は同一市町村内の引越しなので、国民健康保険など手続きは一つの市町村で行えば完了します。
ただ同じ市町村でも、住所変更手続きは必要です。
- 本人確認書類
※外国人のかたについては転居者全員の在留カード - 印鑑
- 国民健康保険証(加入者のみ)
- 後期高齢者医療被保険者証(加入者のみ)
- 通知カード、またはマイナンバーカード
- 住民基本台帳カード(持参者のみ)
住所変更しないと旧住所に役所の書類が届いてしまう
住所変更しなくても、日常生活に支障が出るケースはほとんどありません。
ただ各種サービスの登録住所が旧住所のままだと、旧住所宛に郵便物が届きますし、役所からの書類もそちらに送られます。
意外と役所から送られてくる書類は多いため、転居届も忘れずに行い、住所変更漏れに対応するために転送サービスも活用してください。
住民票の異動手続きでよくある質問
住民票の異動手続きで使用する印鑑の種類は?
住民票で使用する印鑑は認印で問題ありません。
認印とは文房具店で販売している朱肉を使用する印鑑をいい、スタンプ式のシャチハタなどは認印として使えませんのでご注意ください。
スタンプ式のハンコは押す表面がゴム製なので、経年劣化や押し方によって印影の形が崩れることなどを理由として、役所の書類に使用するのは認められていません。
なお最近では、転出届の住所・氏名を自筆で書いた場合、印鑑が不要としている自治体もあいります。
出所:室蘭市
ただ印鑑の有無は役所によって対応が変わるため、持ち合わせの印鑑が無い人は、役所に印鑑が必要なのかを確認してください。
委任状に押印する印鑑は実印でないとダメなのか?
実印とは市区町村で登録している印鑑です。
住民票異動手続きの委任状に押印する印鑑は、実印である必要はありません。
そのため委任状には、認印を使用して大丈夫です。
委任状の代理人として手続きできない人はいるのか?
一般論になりますが、民法では代理行為の要件や効力について明記している一方、代理人になる人の要件に年齢などは規定されていません。
(代理人の行為能力)第百二条 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
したがって未成年者などを代理人と選任し、住民票の異動手続きをしてもらうことは可能だと考えられますが、未成年者など制限行為能力者が代理人として行った行為は、取り消せません。
また法律行為は状況によって効果が変わることもあるため、具体的なケースについては弁護士などの専門家にご相談ください。
本人が委任状を作成できない場合はどうすればいいのか?
委任状の作成は、委任者が作成するのが原則です。
しかし委任する本人が執筆できる状況でない場合においては、本人が転出届手続きを委任する意思の確認した上で代筆することも可能です。
代筆により委任状を作成した際は代筆者の氏名と代筆した理由を記載し、委任者自身も署名します。
なお本人の署名も難しい場合には、拇印も認めている自治体もありますので、前もって手続きを行う市区町村にご確認ください。
委任状には有効期限はあるのか?
委任状の効力は、法的に有効期間は定められてはいません。
ただ公正証書の作成時に使用する印鑑証明書の有効期間は、作成後3か月以内と決まっています。
そのため一般的に作成してから3か月間以内の委任状であれば、問題なく使用できると考えれます。
役所手続きを代理人に一任しても問題ないのか?
委任する行為は、委任者と代理人が同意していれば役所手続き全般を委任することも可能です。
ただ委任する範囲を広げすぎると、代理人が悪用した際に被害を被ることになります。
また相手方がいる場合、代理人が行った法律行為(売買契約など)を取り消せない可能性が高いため、委任する事項は限定するのが一般的です。
住民票の異動手続きは必ずやらないといけないのか?
住所が変わった際の住民票の異動手続きは、任意ではなく義務です。
住民票は国や都道府県、市区町村が住民に関する記録を把握するために必要な重要情報です。
そのため登録されている住所と実際の住所が違うと、自治体が正確に情報を掴めないため、児童手当の支給が受けられないなどの支障が発生します。
住民票異動手続きは面倒ですが、やらないことによるデメリットもありますので、期間中に手続きを済ませてください。
- 氏名
- 出生の年月日
- 男女の別
- 世帯主(世帯主じゃない人は世帯主の氏名と世帯主との続柄)
- 戸籍(本籍のない人や本籍の明らかでない人は、その旨)
- 住民となった年月日
- 住所および同じ市町村の区域内において、新たに住所を変更した人は、その住所を定めた年月日
- 新たに市町村の区域内に住所を定めた人は、その住所を定めた旨の届出の年月日および従前の住所
- 個人番号(マイナンバー)
- 選挙人名簿に登録された人は、その旨
- 国民健康保険の被保険者
- 後期高齢者医療の被保険者
- 介護保険の被保険者
- 国民年金の被保険者
- 児童手当の支給を受けている人は、その受給資格に関する事項
- 米穀の配給を受ける人は、米穀の配給に関する事項
- 住民票コード
- その他、政令で定める事項
住民票異動手続きをごまかした場合の罰則はあるのか?
住民票異動手続きにおいて、虚偽の転出日や転入日を記載するのは違法行為です。
住民基本台帳法
第五十二条
第二十二条から第二十四条まで、第二十五条又は第三十条の四十六から第三十条の四十八までの規定による届出に関し虚偽の届出(第二十八条から第三十条までの規定による付記を含む。)をした者は、他の法令の規定により刑を科すべき場合を除き、五万円以下の過料に処する。
※第22条は「転入届」、第23条は「転居届」、第24条は「転出届」の規定です。
虚偽記載のみであれば、5万円以下の過料で済みますが、不正受給などの目的で虚偽の届出をした場合、詐欺罪などに該当する恐れもあります。
そのため万が一提出期限を過ぎてしまっても、正しい日付で届出書を提出してください。
住民票の代理手続きのまとめ
住民票異動手続きを代理で行う場合の手順・必要書類のまとめです。
- 手続きは原則本人・世帯主・同世帯人
- 委任状を作成すれば代理手続き可能
- 委任状の様式は市区町村ホームページに掲載
- 必ず本人が委任状を作成すること
引越し後に住所変更の手続きをする場合、住所変更後の住民票が必要になることが多いですで、住民票異動手続きは早めに行いましょう。
なお引越し手続きについては、『引越し時にやること!作業はチェックリスト見ながら準備しよう!』をご参考に、作業をしてください。